沖縄の長寿と台風
予期せぬ場所で、沖縄県の製塩会社のT社長と出会った。名刺交換をし、自己紹介しながら、これって、マズイ状況かなあと思ったけれど、先方はまったく気にかけず話しかけてくる。
「沖縄県の人の寿命が長いのは、頻繁に台風が来るからだと私は思っている。その理由は何だと思いますか?」
「うーん……、台風が来ると、いろいろと準備が必要だし、頭も身体も使うからですか?」
「いや違う。ミネラルが降ってくるから」
T社長の仮説によれば、暴風雨が沖縄の土地に海の水を運んでくる。生命は海で生まれたから、海の中にあるミネラルは生命の力を引き出してくれる。ミネラルが豊富に含まれた土地で育った農作物を食べていれば、健康になるし、寿命も延びる。現在では、沖縄県でも不健康な人が増えているけれども、それは沖縄県産の農産物を食べなくなったから。だからこそ沖縄の風土を生かし、長寿に結びつく塩をつくりたい。
T社長の考案した製塩法は、台風によるミネラル降下を再現するものである。大きなテントのなかで海水を霧状に散布し、少しずつ水分を蒸発させてゆく。すると塩は大きな結晶とならずに、さらさらの塩になる。ミネラルが豊富な塩には、どことなく甘みがあって、コクがある。
じつはT社長の開発した塩は、含まれるミネラルの種類数は世界一であるとして、しばらくギネスに認定されていた。ところが、それを上回る塩が宮古島で開発され、世界一の座は奪われてしまった。僕はほんの少しだけ宮古島の取り組みに関わったことがある。T社長と出会って、マズイと思ったのは、そんな経緯があったからである。しかしT社長は遠慮なく話してくれたし、製塩工場も見せてくれた。とても度量の大きな人物である。
もちろん宮古島の塩の方がミネラル含有量は多い。しかしT社長のようなロマンある仮説から生まれたのではなく、技術的な可能性を追求した結果として生まれた塩である。僕の立場からすれば、宮古島の塩を応援すべきなのだろうが、T社長の方も応援したい。どっちも頑張ってほしい。両方とも、とても美味しい塩である。
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