リスク社会

世界経済フォーラムは毎年「グローバルリスク」レポートを出している。今後の10年間を見通したもので、つい先日(1月13日)に「グローバル・リスク2009」が発表された。このレポートでは「発生確率」と「被害の大きさ」で多様なリスクを評価しているが、「被害の大きさ」については、想定される「死者数」と「損害額」の2側面から分析している。

想定される「死者数」と「発生確率」の2軸で、いろいろなリスクをマトリクス上にプロットする。それぞれのリスクについて、前年からの変化が信号のように色分けされている。赤であればリスクが「増加」、オレンジは「同等」、グリーンは「減少」である。20余りのリスクのうちで、前年より増加したと見られているのが「気候変動による大きな気象変化」だけである。その他については「減少」ないしは「同等」である。「気候変動による大きな気象変化」では、発生確率は前年と「同等」であるものの、被害の大きさが「増加」したと見られている。
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いっぽう「損害額」と「発生確率」の2軸でリスクをマトリクス化したものもある。こちらの方では「資産価格の暴落」「新興国でのグローバル化の後退」「財政危機」など、経済に関係する、かなりのリスクが「増加」したと見られている。

「死者数」と「損害額」の両方をトータルに考えると、昨年から今年にかけて、社会におけるリスクは増加したと言えるだろう。良いニュースが少なく、悪いニュースばかりを耳にする今日この頃であり、リスクの増加は身をもって感じられる。

数多くあり、そして大きさも増加しつつあるリスクに、どう対応すべきなのだろうか。一挙両得的な取り組みを行うべきなのだろう。例えば、できるだけ多くの人が消費中心の生活を脱却して農的暮らしを実践する。「食料価格の急騰」や「慢性病(生活習慣病)」は、発生確率でも、被害の大きさでも、とても大きなリスクと見積もられている。農的暮らしの実践は、その2つのリスクを小さくし、もちろん気候変動のリスクを小さくする。

しかし多くのリスクをはらむ社会である。うんざりするか、チャレンジングだと考えるか……。

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広がる不耕起農法

日経サイエンスの最新号、「土壌を守る不耕起農法」という記事が掲載されていた。世界では、耕さない農業が少しずつ広がっているそうだ。アメリカでは保全耕起という農法が推奨され、政府からも補助金が出るという。従来の耕起農法だと、収穫後に作物残渣(例えばトウモロコシの茎)を農地にすきこむが、アメリカの場合、地表の30%以上が作物残渣で覆われていると、保全耕起として認められる。保全耕起を行う農地面積の割合は1994年に26%だったものが、2004年には41%にまで増加し、増加分のほとんどは不耕起農法だという。

保全耕起ないし不耕起農法が広がっている理由は、土壌の流出を防ぐためである。農地を耕すと地面が露出することになり、風や雨によって土壌が飛ばされたり、流れたりする。かりに農地が傾斜地であったとしたら、さらに土壌の流出が進みやすくなる。耕さない農業が増えているということは、それだけ土壌流出が深刻だということだろう。

耕さない農業は、農地の持続可能性を高めることになる。ただし良いことばかりではない。地表が作物以外の雑草で覆われていると、太陽光線が直接、地面に届かず、地温が上がりにくくなり、作物の初期成長が遅れることになる。当然ことながら雑草が生えやすくなり、その成長を抑止しなくてはならず、大規模農場であれば、多くの除草剤が必要となる。作物残渣を地表に残しておくと、保水性が高まるが、水分量の増加によって、新たな病害虫が発生する可能性も出てくる。

おそらく、いま世界の農業は過渡期にあり、次第に耕さない農業が広がってゆくのだろう。すると、しばらく農作物の増産は期待できない。食料需要の高まりによって、またバイオ燃料への転換によって、農作物の価格も上昇傾向にある。農業の持続可能性を高めようとすると、生産サイドでは、むしろ当面は減産に向かうことになる。これからも波乱含みは続くのだろう。

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生物多様性、市場の画一化

さほど大きく取り上げられていないが、最近よく目にする新聞記事。BHPビリトンとリオ・ティントという2つの大きな鉱山企業が合併する話が持ち上がっている。かりに両社がひとつになると、世界の鉄鉱石市場の4割を占める巨大メジャーが誕生するそうだ。この1年余りで鉄鉱石の価格は約2倍に跳ね上がっている。そして市場に大きな影響を及ぼすメジャーが誕生すると、競合相手が少なくなり、価格支配力も高まることになる。日本などの資源輸入国にとっては、決して好ましい状況とはいえない。

しかし石油ショックのときがそうであったように、資源の価格が高くなったらなったで、新たな知恵が生まれるのではないだろうか。悲観しても仕方がない。楽観的に考えて、革新へチャレンジする機会ととらえるべきだろう。

資源が高くなるのは仕方がないとして、少し気になることがある。このところ企業も生物多様性保全に積極的に関与すべきという風潮が生まれつつある。トヨタ自動車などの一部企業では、生物多様性保全のための指針を定めつつある。WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)などの組織でも企業向けのガイドラインを発行している。

そして企業と生物多様性保全という文脈において、これまでリオ・ティントという企業は、先進的に取り組みを行う企業として紹介されることが多かった。鉱石を採掘するときに、周辺の生態系に適切な配慮を払い、相応の対策を施してきた。同社の取り組みは、高く評価されることが多かった。

生物多様性。少ない種類ではなく、多様な種類の生物が生息する方が望ましいと考えられている。人間の社会でも同じではないだろうか。画一的ではなく、いろんな個性があった方がいい。ところが、どうやら市場はそうではないらしい。生物多様性に配慮するというリオ・ティント社は合併するかもしれない。市場のプレーヤーは少なくなり、多様性は失われることになる。

人間は生物である。だから人間がつくった企業も、生物と同じような規範のもとで振舞ってほしいと思う。しかし扱うものが非生物であると、そうはならない。対象が生物であっても、それが非生物的に扱われる場合には、やはり多様性は尊重されなくなる。生物多様性と、市場の画一性。どこで折り合いをつけるべきなのだろうか。

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タイのごみ事情に思うこと

ふとしたことでアジアの都市ごみ(municipal waste)排出量のデータに出くわした(UNEPデータ)。1人当たりの排出量では、てっきり日本が第1位かと思っていたが、意外にも日本は第3位。1995年時点では、日本人1人当たりのごみ排出量は1.5kg弱/日・人で、アジア第1位。ただし2005年には1.3kgまでに減少。いっぽうラオス、タイの排出量が大きく伸び、2005年には日本を上回り、タイが第1位で、ラオスが2位になった。2005年のタイの1人当たりのごみ排出量はちょうど1.5kg/日・人である(なお、このデータには産業廃棄物は含まれていない。ごみ全量で考えると、やはり日本人1人当たりは第1位のような気がする)。

タイやラオスで急激にごみの排出量が増えているのは、伝統的な社会にいきなり、欧米ないし日本型の消費スタイルが広がったからである。短期間のうちに大量の物資がどっと持ち込まれるものの、ごみ処理やリサイクルなどの体制が追いつかない。タイやラオスに限らず、途上国に行くと、街から離れた場所に、ごみが山積みされていることは少なくないし、ごみの中で生活している人たちもいる。市場経済は経済格差を生み出すし、土地を奪われる人も出てくる。新しい競争社会についてゆけない人もいる。そのような人たちが、ごみの中で生活することになる。

Dsc01751 2年前にタイ東北部のごみ処理場に行ったことがある。すぐ隣に集落(いわゆるスラム)をつくって、暮らしている人たちがいた。彼らは、未分別のごみの中から、アルミ缶やプラスチックなどの有価物を回収し、それを売って生計を立てていた。食べることができるものがあれば、食事の足しにしているそうだ。

もともと1人の女性から始まった。かつては、ごみの中から有価物を集めて売りさばくということを考える人は少なかった。だから、かなり実入りのいい商売となった。ごみの量も増えてきたし、一緒に生活する仲間も増え、やがては集落を形成するまでに至った。

ところが最近は事情が変わってきた。ごみの量は相変わらず増えているが、ごみの中の有価物が減ってきた。都市部でも貧しい人が増えたために、街中でアルミ缶などを集める人たちが出てきたからである。処理場に持ち込まれる前に、有価物は消えてしまう。ごみの量は増えてゆくから、衛生条件は悪くなる。そのうえに経済的にも苦しくなってくる。他人事ながら、何とかすべきだと思った。しかし僕には具体的なアイデアは何もない。

一般に「日本には公害などを克服した経験があり、そのノウハウや省エネ技術を途上国にも生かすべきだ」と言われることが多い。はたして、そうなのだろうか。日本の20世紀型の技術には相応の資金を必要とする。国債など、日本の借入金残高は世界でトップクラスである。そんな経験を伝えるべきなのだろうか。市場経済が生み出したスラムを再建した経験も日本は持っていない。やはり現地の人たちが、現場で考えるしかない。必要のなかから知恵は出てくる。

むしろアジアに学ぶという姿勢の方が重要だと思う。きっと自然と折り合いをつける暮らし方は、日本よりもまだ残っているはずだ。地球温暖化を抑止するのは、いまの社会とぜんぜん違った状態をつくらないといけないのだから……。

多くのタイの人たちは寛容で優しいと思う。だから現代社会の負の部分に無防備な部分があるのかもしれない。ごみ排出量がアジア第1位という不名誉を撥ね返すようがんばってほしい。

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エコ・マーケティング

いつも水筒を持ち歩いている。中身が空っぽになったら、行く先々で補充したりするけれども、それができない場合もある。仕方がないから諦める。しばらくの間、水分を摂らなくても身体の具合が悪くなることはない。しかし、つい最近になって、環境に配慮したドリンクが発売されたというので、ものは試しと買ってみた。ロハスクラブによるドリンクヨーグルトで、コンビニエンスストアのローソンで販売されている。

11ロハス的なライフスタイルにマッチするように設計された商品だそうだ。長い時間ゆっくりと発酵させ、砂糖を使わずにリンゴの甘みだけで、じっくりと丁寧につくられているという。容器には「温暖化STOPのために、木を植えましょう」と表示されていて、売上金の一部は植林や生物多様性の保護、南北格差解消などの活動に当てられるそうだ。ただし商品価格のうち、どの程度の金額が環境活動に使われのかが示されていないのは残念である。不透明感があるなあ。

当然のことながら、このドリンクヨーグルトの価格はやや高めである。しかし他のドリンクに比べると売れ行きが好調のようである。そのことは陳列棚に在庫状況に現れていて、僕が手にしたのは最後の1本だった。環境に配慮した割高の商品が売れるということは、環境問題に対する関心の高まりと考えていいだろう。そして同時に、消費者心理に訴えかけるマーケティングが奏功したとも言えるだろう。

ドリンクヨーグルトを購入したローソンの近所に、エコプラザ(東京都港区)という施設がある。小学校の廃校を利用した公共施設で、環境問題に関する展示や情報発信を行っている。ちょうどいま「企業と環境展」というイベントが開かれていた。港区に事業所を置く企業のCSR(企業の社会的責任)を中心とした環境への取り組みを、区民や区内在勤者などの広く知ってもらうおうというイベントである。

Dsc04798施設を取り囲むフェンスにポスターがぐるりと張り巡らしてある。紙の無駄遣いのような気がする。昼休みの時間帯に、足を踏み入れてみた。厳格者は僕の他には、誰ひとりいなかった。しかし煌々と蛍光灯が灯されている。この辺りはオフィス街で、平日の昼休みに来場者がいなかったら、その他の時間は、なおさら閑散としているはずである。とてもエネルギー効率のイベントである。

付近では、ロハスをアピールするドリンクヨーグルトは売れている。環境問題に関心を持つ人は少なからず存在する。しかし環境問題をテーマとしたイベントは閑古鳥が鳴いている。イベント主催者側のマーケティング不足とは言えまいか。そもそもCSRというテーマ設定が悪かったりして……。

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アメリカが温室効果ガスを80%削減?

アメリカでは次期大統領選挙に向けたキャンペーンが行われている。そして11月5日に民主党のヒラリー・クリントン氏が温暖化対策についての政策を発表したそうだ。題して、 Powering America’s Future : New Energy, New Job(力強いアメリカの未来へ:新エネルギーと雇用創出)。 地球温暖化を防止し、エネルギーの輸入依存度を下げることを目的とし、3つの大きな目標が示されている。

(1) 1990年レベルから2050年までに温室効果ガスの排出量を80%削減すること。 (2) 2030年までに石油の輸入を3分の2まで減らすこと。 (3) 炭素ベースの経済社会を、効率的なグリーン経済に移行させ、次の10年間でクリーンエネルギーから最低500万人の雇用を創出すること。

これらの目標を実現するための施策についても触れられている。キャップ・アンド・トレードによる排出権取引制度の実施。建物のグリーン化など、電力消費量を削減するための総合的施策の展開。代替エネルギーへの投資を推進するファンドの設置。バイオ燃料などの再生可能エネルギーの推進。燃費規制の大幅な強化と、自動車メーカーへの支援策。低中所得者がグリーンホームを購入しやすくするプログラムなど。いろいろある(原子力発電についての言及はなかった)。

掲げた3つの目標のうち(1)(2)は、かなり遠い先のことで、ヒラリーさん自身が生きているかどうか、わからない。ただし(3)の目標は比較的近い未来のことであり、かりにヒラリーさんが2期連続して大統領をつとめた場合、2期終了時には目標年次を目前に控えることになる。狙い通りに政策が奏功したとすれば、相当数の雇用が生まれていることになる。

500万人の雇用創出というと、日本の自動車産業関連で働く人たちと同規模のボリュームである。日本の環境省では環境ビジネスの将来予測を行い、2025年の雇用規模を222万人と見積もっているが、それよりも早い時期で、しかも2倍以上の雇用創出。クリーンエネルギーを中心とした一大産業を起こそうという、非常に野心的な目標である。

政治的なキャンペーンでは、ともすればバルーンが上がりがちである。しかし人々の関心を政治に向け、そして大きな社会問題への関心を喚起するという点で、バルーンにも少なからぬ意味がある。アメリカ国内で、地球温暖化への関心がより大きく高まることを期待したいものである。さて日本は、どうしたものか。このままの情勢だと、排出権取引で欧米に出し抜かれてしまいそうな気配もあるのだが……。

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サスティナブル・アート

ちょうどいま「サスティナブル・アートプロジェクト 事の場2007」というイベントが、東京の上野界隈で開催されている。廃校になった小学校や公園、ギャラリー、商店街の空き店舗、旧岩崎邸庭園など、複数の会場で現代アート作品(インスタレーション)が展示されている。場所にまつわる多様な要素、すなわちサスティナビリティ(持続可能性)、社会資源、記憶など、地域にまつわる出来事をテーマとしたアート・イベントだそうだ。

すべての会場に足を運んだわけではないが、2ケ所(旧坂本小学校、墨田公園リバーサイドギャラリー)の作品を見てきた。なかなか面白かったと思う。

旧坂本小学校は、およそ10年前に廃校になった小学校である。教室や理科実験室、廊下、校庭などに、20余りの作品が展示されている。鑑賞者をも作品の一部として、取り込んでゆくような作品。変わりゆく東京のいま現在を想起させる作品。ポテトチップスの不思議な光を実感できる作品……。まるで小学校の入学直後のような感覚を味わった。初めて小学校に入ったとき、校舎はとても大きかった。理科室、音楽室、調理実習室、体育館。迷路のように大きな空間に感じられたし、何があるのがワクワクさせられた。そして同時に、学校の歴史のようなものも感じられた。

Dsc04552墨田公園リバーサイドギャラリーは、隅田川に面した墨田公園の地下にある。ここで展示されていたのは「流れの眺め」という作品。隅田川に流れ来たものを拾い集めて、ビニール袋に入れて、ただ床に並べたというインスタレーションである。すべてがゴミで、大半がプラスチックである。幅5メートル、長さ30メートルほどの長方形の平面上に、大量のゴミが並べられている。靴や傘、便座などもあるけれども、ほとんどは容器や包装材である。ペットボトル、カップ麺の容器、惣菜用のトレーなど。それらは、ほんの一瞬で、製品からゴミに変わってゆく。昔から、社会はゴミを出すことで成り立っている。しかし時代とともに、ゴミを生み出す速度が速くなった。どのように始末をつけるかが、ますます重要になる。

何かを得るには、何かを捨てなければならない。捨てながら、どう生かしてゆくか。何か新しいものをつくると、何かが失われてゆく。しかし完全になくしてしまうのではなく、何らかの形で残してゆく。そのような新陳代謝によって場ができてゆく。サスティナブル(持続可能)は不変ではなく、変動のなかで安定を確保するものだと思う。

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肥満のグローバル化

今日は健康診断。腹囲(ウェスト)を測った。来年から保健制度が変わって、40歳以上だと、健診項目に腹囲が加わることになる。太り過ぎの人が増えると、生活習慣病にかかる人も増え、医療費も増加することになる。健康保健制度を持続的なものにするには、生活習慣病を減らさなければならない。太り過ぎの人を減らすべき。そう考えられて、制度が変更された。

OECDのデータによると、2003年時点で、日本の肥満者は3.2%、太り気味の体重過多の人は21.6%で、両方を合わせると24.9%となる。体重過多の人の中には、スポーツ選手のように、筋肉が多いために体重が多い人もいるので、すべて人が問題となるわけではない。それでも、ほぼ4人に1人は太り過ぎだと見なしていいだろう。たしかに周囲には、少なからぬメタボ親父がいる。

『日経サイエンス』の最新号(2007年12月号)、特集記事は「肥満と食糧危機」である。先進国だけでなく、途上国でも肥満が増えている。中南米のほぼすべて、中東、北アフリカの多くの国々で、4人に1人が体重過多になっているという。例えばメキシコでは1989年には体重過多の割合は10%未満で、むしろ当時の問題は飢餓だったという。それが2000年には体重過多または肥満の割合は61.9%となり、2006年には69.3%までに上昇した。中国でも体重過多または肥満の割合は急上昇、10年余りで倍増である。1991年の12.9%から2004年には27.3%。(以上のデータは、Barry M.Popkin ”The World is Fat” からの引用)。いまでも飢餓に苦しむ地域はあるけれども、総体的には、地球規模で肥満化が進んでいるようだ。

脂肪が多い食品を食べると、脳内麻薬様物質のβエンドルフィンが分泌され、やめられなくなる。そして世界的に動物性食品や食用油の消費量は増えている。地球規模での肥満化の大きな原因のひとつである。そこでイギリスでは、高脂肪食品に課税する「脂肪税」の導入が提唱されているそうだ。高脂肪食品の値段が明らかに高くなれば、おそらく肥満や体重過多は減るだろう。

地球規模での肥満と温暖化。同じような構図を持った問題である。いずれも最終的には一人ひとりのライフスタイルに帰着する。そして問題を回避する手段として、課税が考えられている。炭素税と脂肪税。個人的には、いずれも導入賛成である。

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議定書達成さらに厳しくなるかも

昨日(10月23日)、温暖化対策を話し合う環境省、経済産業省の合同の審議会が開催された(正式名称、中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会 合同会合)。議題は、産業界の温室効果ガスの自主行動計画についてであり、18業界の追加削減量が明らかにされた。産業界合計で、削減量が2000万トン上積みされたそうである。新聞各紙では、京都議定書の目標達成に一歩近づいたと報じられている。

京都議定書の基準年となる日本の温室効果ガスの排出量は12億6100トンで、これから6%を削減することが目標である。ただし6%のうち1.6%は排出権の購入、3.8%は森林吸収分でまかなわれる計画で、産業や民生、運輸部門で実質的に削減すべきは0.6%、約750万トンとされている。ところが2005年時点で約8%、9900万トンの増加となっている。そして2010年までには、これまでの対策効果が現れてくるものの、それでも1990年に対して1.0~2.1%、1200万~2600万トンの増加が予測されている。750万トン減らすべきなのに、1200万~2600万トンの増加。つまり、およそ2000万から3350万トンのギャップがある。

そこで、産業界で自主行動計画を上積みされることになった。今回の追加対策、2000トンによって、不足分の半分以上をカバーできる計算になると新聞各紙では報じている。産業界では生産工程の効率化をさらに進めてゆくことになるが、最終ユーザーの消費形態の変更にも一役買ってほしいものである。大きいSUVや大画面テレビをつくっておきながら、「産業界は乾いた雑巾を努力しているのに、家庭部門の省エネが進んでいない」と主張するのは、とても違和感を覚えてしまう。

さて、森林吸収量であるが、森は順調に二酸化炭素を吸収してくれているのだろうか。今年の5月に公表された「京都議定書目標達成計画の進捗状況」を見ると、芳しくない状況にあるようだ。3.8%、約4800万トンの削減に該当する森林吸収を確保するためには、1年間の平均で78万ヘクタールの森林を整備しなければならないらしい。しかし近年の整備実績は減少気味で、直近では58万ヘクタール(2004~2005年)で、目標レベルの約75%の水準にとどまっている。現状趨勢がつつけば、1200万トンの不足が発生することになる。これは少なからぬ量である。

政府では「めざせ1人1日1kg ~ みんなで止めよう温暖化 チームマイナス6% ~」というキャンペーンを行っている。とても状況を正確に伝えているとは思えない。減らすのは6%ではなく、実質は0.6%である。6%のうち、3.8%は森林吸収分でまかなわれることになっているが、現状趨勢では森林の整備は不十分で、確保できないかもしれない。マスコミの皆さん、もっと頑張ってくださいな。

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壮大な温暖化阻止の原則

ドイツのメルケル首相が、今月上旬にドイツ国内で開催された気候変動抑止に関する国際シンポジウムでスピーチをしたらしい。 Managing Climate Change Mitigationと題されたスピーチのサマリーは、ドイツ政府のホームページで見ることができる。

メルケル首相によると、最善の方法は、温室効果ガスの排出許容枠を設けたうえで、排出権の取り引きを世界中で行えるようにすべきだという。そして排出権取引の原則はシンプルなもので、人口に比例させて各国の排出許容量を割り当てるべき、と主張している。いたってシンプルな考え方である。主要国トップとして、各国の目標設定のスキームについて明言したのは初めてだと思う。もっとも何年も前から、同じようなことはNGOなどが提案してきたわけだけど。

2000年次点の世界の温室効果ガスの排出量は230億トン(二酸化炭素換算)である。基準年を何時にするかは決まっていないが、2050年までには世界の温室効果ガス排出量を半減化するとことが、この6月のハイリゲンダム・サミットで合意された。仮に2000年を基準年とするなら、115億トンに減らすことが目標になる。国連の人口予測の中位値では、2050年には人口は約90億人になるそうだ。115億トンを90億人で割ると、1人当たり約1.3トンとなる。

ちなみに2000年の日本人1人当たりの温室効果ガスの排出量は約9トンであるから、目標に到達するには約80%の削減が必要になる。なおアメリカの1人当たりの排出量は約20トンで、ドイツが10トン、中国が2.5トン、インドが1トンである。先進国にとっては非常に厳しいハードルであり、途上国にとっても簡単に達成できるものではない。

とてもチャレンジングで、壮大な目標である。重荷がどっと肩にかかり、胃が締めつけられる思いもする。実現できるだろうかと不安になる。しかし考えようによれば、ワクワクする世界でもある。

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