山のモミジが、鮮やかな赤や黄色に色づく錦秋の頃。1年の中でも、とくに好きな季節である。山は美しく、身体を動かすにも、ちょうどいい時期だと思う。はじめのうちは肌寒いけれど、手足を動かすうち、身体の中から少しずつ温まってくる。ジンワリ、ポカポカ。とても心地よい。
この時期、京都市内の有名な観光名所は、多くの人であふれている。もちろんクルマは渋滞しているし、歩く観光客の方も渋滞している。場所によっては、紅葉を見に行ったのか、人を見に行ったのか、わからないくらい、である。
ただし、まだ穴場のような場所はある。そのような場所は、観光バスが入れない場所であったり、徒歩でしか行けない場所である。例えば、東山の南禅寺の近くの日向大神宮。南禅寺より地下鉄の駅に近いけれど、バスは入れないし、勾配のきつい坂道を登らないといけない。大賑わいの南禅寺とは対照的に、閑散としている。
しかしモミジは美しく紅葉しているし、十月桜というサクラが開花している。真っ赤なモミジと、淡いピンクのサクラの組み合わせは、なかなか風流である。多くの人が来ないから、手持ち無沙汰になった、巫女さんがモミジを撮影している姿も風流だったりする。
お盆に送り火が行われる大文字山の山頂も、意外と言うか、やはりと言うか、あまり多くの観光客がやってこない。ふもとの銀閣寺道から、30分ほどの登山。山頂からは京都盆地全体のみならず、天候が良ければ、大阪方面も見渡すことができる。絶景だと思う。しかし急な山道を登る人は、それほど多くない。
絶景を見に来た人が急病になり、ちょうど救助隊に助けられるという場面に出くわした。山頂まで、あと一歩という場所で、足止めをされた。すると数分後に、救援用のヘリコプターが山頂すれすれまでに、高度を下げてきた。ヘリコプターは空中で静止し、まず2人の救援隊がロープで降りてきた。救援隊が地面に到着すると、ロープは上げられ、今度は担架が下りてきた。するとヘリコプターが高度を上げて、付近を旋回し始めた。急病患者の容態を確認したうえで、担架にしっかり固定する作業が行われている。
十分ほどすると、用意が整い、再びヘリコプターが山頂付近まで高度を下げてくる。空中で静止し、ロープを下ろして行き、まもなく担架を抱えた隊員が引き上げられてゆく。ヘリコプター中ならも手が伸びてくる。ほどなく担架と隊員はヘリコプターの中に収容され、ヘリコプターは高度を上げ、大きく旋回して、京都の伏見の方向へと飛び去っていった。格好よかった。人がヘリコプターで救助される場面を見たのは、生まれて初めてである。
僕のように山頂直前で足止めを食った人は、百人弱はいたと思う。ヘリコプターが山頂すれすれで静止しているときには、山頂付近は、プロペラからの強い風にさらされる。そのため消防署の隊員から、風の当らない安全な場所に移動するように注意される。しかし多くの人は、巻き上げられる草木や土埃にまみれて、ずっとヘリコプターの様子を見ている。花より団子ならぬ、紅葉よりヘリコプターである。
山登りに行くときは、やはり注意が必要である。改めて感じた。
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