フットプリント物語
久しぶりにパタゴニアのホームページを訪れてみると、「フットプリントクロニクル」というコーナーが開設されていた。文字通り、足跡の記録である。10の主要製品について、開発段階から最終製品に至るまでのプロセスを具体的に紹介されている。動画を交えて、製品づくりに関わる人たちの生の声も聞けるようになっている。同時に、もともとの材料が最終製品になるまでの移動距離、CO2排出量、廃棄物発生量、エネルギー商品が数値化して示されている。例えばパタゴニアのポロシャツ1枚を配送センターに届けるまでに、約12キロのCO2が排出され、ポロシャツと同じくらいの重さの284グラムの廃棄物が出る。
ポロシャツは、アメリカでのデザイン、トルコでのオーガニックコットンの生産、タイでの紡績と縫製を経て、アメリカの配送センターに送られることになる。地球規模レベルで展開される製品づくりを、まるでバーチャルツアーのように学ぶことができる。オーガニックコットンの世界最大の生産地は、どうやらトルコであり、トルコでは畜産と組み合わせてオーガニックコットンがつくられているらしい。またタイのパタゴニアの協力工場は、高い品質を追及すると同時に、従業員に対する福利厚生にも大いに気を配っている。そしてアメリカの配送センターでも、やはり環境対策に大きな重点を置いている。
しかし、だからといって満足できる状態が実現されているわけでない。製品を運ぶときのパッケージのなかには、どうしても廃棄されるものが出てくる。またアメリカでは公共交通機関が整っていないために、通勤には自家用車を使わざるを得ず、1人乗りで出社する従業員も少なくない。すべてではないだろうが、製品づくりに伴うマイナス情報も提示されている。現代社会において商品をつくると、環境への何らか影響が発生することは避けられない。だからパタゴニアのホームページには、「いままでのところ持続可能なビジネスと呼べるものは存在しません」という表現がある。
このところカーボンオフセットという考え方に注目が集まっている。人間活動によって、あるところで排出された温室効果ガスを、植林や自然エネルギーの利用によって相殺(オフセット)しようというものである。もちろんオフセットは重要だと思うけれども、その前に、どのようなプロセスを経た結果、温室効果ガスが排出されたかを知ることの方が、もっと重要ではないだろうか。ただ、お金を払ってオフセットするだけではなく、具体的背景を踏まえたうえでオフセットする。パタゴニアのフットプリントクロニクルが示しているように、「必ず影響がある」ということを、まず自覚することが重要だと思う。
いずれにしても、このフットプリントクロニクルは興味深い。例えば、途上国の工場でのビデオ映像には、食堂の場面が登場することが多く、けっこう食事が美味しそうに見えたりもする。意外にも、一部製品の生地は日本で生産されている。パタゴニアならではの、ちょっとした物語にも思えてくる。クロニクルには「物語り(narrative)」という意味もある。なお僕はパタゴニア・ファンなので、ひいきめも入っている。
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