パーマカルチャーという科学技術
少し前に、知人からメールをもらった。その知人は主に途上国で現地の人と一緒に仕事をしている。近況報告であったのだけれども、パーマカルチャーについての言及もあった。「現地の人たちにパーマカルチャーについて説明しても、それほど好意的な感触は得られない。彼らは『昔からの伝統技術を実践してゆけば、おのずと持続可能な暮らしができる』という。だから、わざわざパーマカルチャーという概念を持ち出す必要があるのだろうか? 疑問を感じることもある……」。そのようなことが書かれていた。僕も、そう感じたことがある。
パーマカルチャーとは、自然資源や人間の社会的活動など、あらゆる要素を互いに助け合う関係に配置することで、生態系が持っている生産力を最大限かつ持続的に引き出すためのデザイン体系である。1970年代にオーストラリアで生まれ、いまや世界中に広がっている。日本でも1993年に「パーマカルチャー」という本が出されていて、「農的暮らしの永久デザイン」という副題がつけられている。メールをくれた知人と知り合うことになったのも、元を辿れば、この本に行き着いてゆく。
大量生産・大量消費の社会のあり方やライフスタイルから脱却し、オルタナティブな生き方を創造する。パーマカルチャーは、そのための有力な概念のひとつだと考えられている。そしてオルタナティブな生き方を創造するときに重要なることのひとつが、先人の知恵を生かすことである。自然や生命の営みは、人智を超える奥行きを持っている。だから長い歴史を通じて、伝統技法へと収斂されてきたノウハウは有効に生かすべきである。
パーマカルチャーは伝統を受け継ぐと同時に、ものごとの挙動を科学的にとらえ、伝統をさらに発展させようしているのだと思う。客観的な視点から、伝承された暗黙知をとらえ、それを理にかなった方法で説明し組み立ててゆく。ダイナミックなシステム思考なのだと思う。そのことに、はっきりと気がついたのは、Permaculture:A Designer’s Manual という本を読んでからである。
この本を読むと、パーマカルチャーの考えのなかには、農業や生物のことだけではなく、自己組織化や創発、カオスやフラクタクルなど、物理やシステム生成などに関わる科学的知見がたくさん含まれていることがわかる。そして物理やシステムとしてみた場合、伝統技法はとても合理的であることも示されている。だから、あえてパーマカルチャーといわなくても、伝統技法で十分というのは確かにその通りである。
しかし現場で伝統技法に取り組みながらも、いったんマクロな科学的視点から伝統技法を評価してみることも有用なことだと思う。科学や技術は日進月歩で進んでいる。最新の知見や技術を活用すれば、伝統技法を大きく改善させることが可能であるし、新たな用途を開発することもできる。先人から伝承しながらも、新たな何かと統合する。本来、伝統は変化するものであり、科学に即して変化させてゆこうというのが、パーマカルチャーの発想なのだと思う。
パーマカルチャーは一人ひとりの生き方は深く関係しているために、それを理念や運動のように受け取っている人は少なくない。しかし、きわめて科学的なアプローチだと思っている。
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