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2009年6月29日 (月)

タイムスリップ食堂

二十数年前、京都で四年間の学生生活を過ごした。その頃に不思議に思ったことがある。「この食堂は、どうして潰れずに、もっているのだろう」。古くて、小さくて、ただし値段は安くて、お客さんが入る気配のない、寂れた食堂がかなりあった。今月から京都に住むようになって、街のあちこちを歩いてみると、当時の食堂がいまだに、そのまま建物で残っている。しぶとい、根強い。

Dsc03300 現在の住まいの近所にも、そんな食堂がある。店頭にメニューが張り出してあって、出巻き定食370円、さかな定食480円。「いろいろおかず250円(?)」。京都の街なかにあって激安の価格である。興味があって、入ってみた。店に入ったとたんに身構えた。

店内には小さなテーブルが5つ。そのうちの4つにテーブルには、老人男性が座っている。4人ともがズボンに下着のシャツ。店内は、どこかで土産品として買ってきたような木工品が所狭しと置かれて、あるいは壁に掛けられて。ラジカセの横にはカセットテープが山積み。エアコンはなく、年代もものの扇風機が首をきしませながら回っている。古びて、そして淀んだ雰囲気に気おされて、店から出ようかと躊躇したときに、恰幅のいい老人から大声を帰られた。「いらっしゃい」。そして老人は店の奥に入ってゆく。

しかたなく空いていたテーブルに腰を下ろした。本当は4人がけのテーブルだが、テーブルの半分は工芸品に占拠されていて、2人でも狭いくらいである。しばらくして、恰幅のいい老人は、お茶を持ってきた。好奇心から、本当は、いちばん安い出巻き定食を頼んでみたかったのだが、遠慮して、さかな定食を注文する。

異空間。大正生まれの祖母は、もったいないと言って、モノを捨てなかった。まるで祖母の茶の間に来たようである。柱時計がボーンと鳴って時刻を告げた。そういえば祖母の茶の間にも柱時計があった。

エアコンがないので、店内は暑い。お客さんの一人が気を効かせ、扇風機の首を調整して、僕の方にも風を送らせようとしてくれている。「ありがとうございます」と礼を述べた。ところが逆に、扇風機の首を固定してしまい、風は僕の方にまったく来なくなった……。吉本ギャグ系のボケ行動パターン。

3人の客は顔見知りらしく、テーブルの間で会話を交わしている。だったら、ひとつのテーブルに座ったらいいのに。しばらく料理は出できそうにない。額の汗をハンカチでぬぐいながら本を読む。

十分ぐらいして、太り気味の腰の曲がった、お婆さんが前のめりの、たどたどしい足取りで、ご飯と味噌汁、漬物を持ってきた。「焼いたアジか、煮付けたサバがありますけど、どちらになさいますか?」。全身黒ずくめで、恰幅のいいお婆さん。かなり濃ゆーいキャラクター。「えっ、いまから聞くの?」と思ったけれど、口には出さすに、サバを注文する。そして、ご飯が出てから3分ほど経って、サバの煮付けは運ばれてきた。湯バーバならぬ、飯バーバの雰囲気を漂わせながら。

食事の味はごく普通。でも値段が安いから、コストパフォーマンスは高いと言えるのだろう。店の看板には「おふくろの味」と回ってあったけれど、むしろ「ばあさんの味」。数十年ほどのタイムスリップ感覚を味わえた。

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コメント

teraさん、こんにちわ。京都は古いものは残る街です。本人にその気はなくても、このような天然ギャグをかます場所がかなり残っています。

投稿: zen | 2009年7月 6日 (月) 15時42分

ユーミンさん、こんにちわ。店と自宅が一緒というか、店と物置が一緒というイメージでした。

投稿: zen | 2009年7月 6日 (月) 15時40分

くっくっくっ。読みながらつい笑ってしまいました。
久しぶりのコメントがこんなですみません。
京都生活からみえるいろんなお話も、楽しみにしています。

投稿: tera | 2009年7月 3日 (金) 22時01分

京都にそんな店ありますね〜。
美濃の国にも昔からやってる安い食堂がありますが、店が自宅と一緒だったりして余計な場所代が要らないからその分安いんでしょうね…。

投稿: ユーミン | 2009年6月30日 (火) 00時08分

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