鯨料理という文化
東京・浅草に鯨料理の専門店がある。しかし近いうちに閉店するそうだ。この専門店は調査捕鯨を行う組織のアンテナショップとして運営されているが、本体組織そのものの運営が行き詰まってきたために、リストラの一環としてアンテナショップを閉店することになった。子供を連れて食事に行ってきた。子供たちにとっては初めての鯨料理で、見聞を広げてやりたいと思ったからである。
有史以来、日本ではクジラ漁を行い、クジラのすべてを有効に使ってきた。食肉として食べるだけではなく、骨で生活用具をつくったり、油で石鹸などをつくるなど、無駄なく利用し、そしてクジラに対する供養も行ってきた。生きてゆくには、他の生物から生命を有り難くいただくことも必要である。だから鯨料理は生きてゆく知恵であり、文化だと思っている。
かつて日本は商業捕鯨を行っていたが、アメリカやヨーロッパの国々からの反対もあって、1980年代半からは調査捕鯨しか行われていない。浅草の専門店で出されている鯨料理や関連商品は、調査捕鯨で獲られたクジラのもので、1頭ごとにDNA登録がされていて、流通段階でのトレーサビリティはしっかり管理されているそうだ。なお巷の居酒屋でも、鯨料理が出されているが、ほとんどのケースはイルカである。
日本やノルウェー、ロシアなど商業捕鯨に肯定的な立場を示す国々では、クジラの種類によっては、じゅうぶんに生息数が増えており、逆にくクジラが増えすぎて大量のサカナを消費していると主張する。いっぽう反対する国々は、やはりクジラの生息数はじゅうぶんとは言えず、またクジラのような知性の高い哺乳動物を捕獲すべきでないという。ずっと意見は対立したままであり、おそらく今後も歩み寄ることはないだろう。僕個人としては、持続可能な量であれば、商業捕鯨は再開してもいいと考えている。
浅草の専門店が閉店しても、調査捕鯨は継続されるわけで、これからも少量の鯨肉は流通することになる。しかし正真正銘の鯨料理を、確実に食べることのできるルートがなくなることになる。
浅草は外国人観光客の多い場所である。だから鯨料理の専門店には、英語やスペイン語を話す欧米人も客としていた。彼らは自国が商用捕鯨に反対していることを知っているのだろうか。美味しそうに、にこやかに鯨料理を食べていた。
蛇足であるが、子孫を残す行為の姿勢は、人間と同じく、クジラも正面を向き合って雌雄が合体する。それは知性あるもの睦みあう姿勢であり、正常位(ノーマル)と呼ばれる。その他の方法は、野獣の姿勢とみなされる。このような考え方は、捕鯨に反対する国々の思想に由来している。
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